みなさん、エスニック系楽器は好きですか?
私は大好きです。
バンドやオーケストラ、エレクトロなどのありきたりな編成の音楽でも、一パートだけエスニック系楽器を入れたりすると途端にこなれた感じになりますし、「分かってる」感も出ます(当社比)。
「とりあえず何かエスニック系音源が欲しい!」という方は、 “Ethno World” や “UVI World Suite” などの総合音源をひとつ持っていると様々な国の楽器を網羅できるため、最初はこれらを導入するのが良いでしょう。
しかし、ソロにも耐えうるレベルでクオリティの高い音源を求めるなら、やはり単独音源になるわけです。
とりわけ二胡という楽器はソロで使われることが多い楽器でありながら非常に打ち込みが難しく、今まで数々のDTMerが頭を悩ませていました(当社調べ)。
そんな時、救世主が現れました。Ample Soundの “Ample China Erhu (以下ACEH)” です。
とても良いのにあまりにもレビューが少ないため、製品概要から詳しく書いていきます。
Ample Soundについて
正直Ample Soundについては、私が語るまでもないくらいDTMerには親しまれたメーカーだと思います。
高品質なギター音源、ベース音源で有名ですね。
もしこれを読んでいて知らなかったという方がいたら、 “Ample Percussion Cloudrum” 、 “Ample Guitar M Lite” 、 “Ample Bass P Lite” の三つはダウンロードしておきましょう。フリー音源ですが良いものです。ギターとベースはハンマリング&プリングできたりします。
そんなAmple Soundは中国・北京にて設立された会社であり、近年では中国の民族楽器を「Ample China」シリーズとして続々と音源化しています。
このシリーズはギター・ベースに比べるとあまり知られていないようですが、おそらく2022年現在で最強クラスの中国系音源が揃っています。さすがは自国の楽器ということでしょうか。全て揃えた場合のお値段も最強クラスです。
ACEHはこのシリーズの最新作(2022年11月現在)となります。
中国系楽器といえば二胡、みたいなところは(私の中で)あるので、発売前からそれはもう期待に胸をふくらませていました。
そして結果は、、、、、、、、、最高でした。
概要
音色
百見は一聴に如かず。まずはこちらをお聴きください。
これらは公式のデモですが、音色の傾向はだいたいこんな感じです。続いて本物の二胡を聴いてみましょう。
いかがでしょう。音色としてはおおむね本物と遜色なく、説得力のある音だと思います。
しかし「公式のデモはあてにならん!こうやって何度騙されたことか……。」という方もいるでしょう。
ご安心ください。こちらに私が実際に打ち込んだものを貼っておきます。
こちら、ACEHトラックの使用エフェクトはリバーブ(Inspired Acoustics INSPIRATA)のみ、音源内エフェクトはローカット以外バイパスとなっております。
購入してからはじめて打ち込んだ曲でもあるので、この程度なら買ってすぐに打ち込める、という参考にしていただければと思います。
収録アーティキュレーション
一覧はSonicwireさんのページをご覧ください。今のところ不足を感じたことはありません。
デフォルトになっているSustainのアタックがかなり強めなため、ゆったりとしたフレーズを歌わせるときはVibratoを多用するといい感じになると思います。
レビュー
まず、長所と短所を挙げます。
順番に見ていきましょう。
長所
音がいい
これはもう言わずもがなです。好みもあるでしょうが、これ以上に音のいい二胡音源を私は知りません。
また、マイクポジションは5種類ありますが、全体的にクローズド気味で録られているため、音作りの幅も広めです。
レガートが全体的に早い
こういったリアル系音源は総じてレガートにモタりが発生しがちなのですが、ACEHはだいぶ早いです。
ポルタメントでない限り、グリッド通りに打ち込めばトラックディレイなしで他トラックと合います。
リアルタイム演奏もやりやすいのではないでしょうか。
ポルタメントが非常に美しい
弦楽器といえばポルタメントです(過激派)。
特に二胡はポルタメントを多用すると一気にそれっぽくなるので、ここの音質や操作感は極めて重要です。
ACEHのポルタメントはその点非常に美しく、奏法による質感の種類も選ぶこともできます。
さすがに若干のモタりは発生しますが、それでも弦楽器音源の中では早い方だと思います。
操作はそこまで難しくない
これは私がキースイッチ式の音源に慣れているから、というのもあるかもしれませんが、少なくともCSS(Cinematic Studio Strings)並みに扱いやすい音源だと思います。
レガートは早く、キースイッチは自動でSustainに戻る機能が付いているため、もしかしたらCSSより簡単かもしれません。
読み込んだ時点でほぼ完成された音が出る
デフォルトの音には既にコンプ・EQ・ディレイ・リバーブがかけられており、そのまま使えます。
もちろんこれらは個別にバイパスすることもできますし、数値をいじることもできます。
キー設定により、トリルとモルデント(装飾音)の全音/半音が自動で切り替わる
たとえばKey=Cのとき、CでトリルをするとC-D(長二度)になり、EでトリルをするとE-F(短二度)になります。
あまり見ない設定ですが、二胡の楽譜はキー指定+数字譜なので、二胡的に自然な打ち込みができます。
続いて短所です。
短所
キースイッチは多め
これは多機能ゆえ、正直仕方ないところでもあります。
とはいえよく使うキースイッチはそこまで多くないので、慣れれば問題ありません。
扱いが難しそうなアーティキュレーションがわりとある
これも仕方ないですね。
特に二胡にはヴァイオリンなどにない特有の奏法があるため、楽器に対する知識がないと使いこなせないかもしれません。
Sustainに少し癖がある
Sustainにはヴィブラートも強弱もほぼなく、ベタ打ちだと極めて機械的です。
物理モデリング音源のような音がします。
CC1(ヴィブラート)やCC11(ダイナミクス)で表情をつけることは可能ですが、ヴィブラートに関してはアーティキュレーションのVibratoを使用したほうがリアルになります。
ダイナミクスはデフォルトではモジュレーション(CC1)ではなくエクスプレッション(CC11)に設定されている
これは短所なのか微妙なところですが、一応私は予備知識なしで触ったときに強弱をCC1で書こうとし、見事に騙されました。
オーケストラ系音源をよく使う方は注意しましょう(設定で変更可能です)。
キー設定には欠点もある
自動的にトリルとモルデントの音程が決まるということは、逆に言えばキーにない音は出せないということです。
たとえばKey=CでG-Abのトリルを演奏させることはできません。
総評
けっこう頑張って短所を挙げましたが、キー設定とSustain以外に関しては慣れればどうということはありません。
それよりも長所が圧倒的すぎますね。
二胡という楽器を本気で打ち込みたいのであれば、ぜひ試していただきたいプラグインです。
それではまた。
Ample China Erhu(Sonicwire)すごくどうでもいいんですけど、SonicwireさんのErhuの読み仮名が「エル―」なの、とても違和感を覚えるのは私だけでしょうか?だいたい「アルフゥ」か「ウルフゥ」、「ウーフゥ」みたいな感じになると思うのですが……。